──縮毛矯正専門・美容師のリアルな独白
こんにちは、矯正屋の辻です。
今回はちょっとだけ、僕自身の「仕事観」についてお話しします。
美容関係のことを書くのって、なんかチャラい気がして苦手なんですが……
でも、これだけはちゃんと伝えておきたい。
「技術を突き詰めるほど儲からなくなる」という美容師という職業のジレンマと
それでも“職人としての矜持”を捨てきれないという個人としての葛藤。
僕が感じている「美容師という職業の限界」について書いてみます。
目次
「クセ毛をストレートにする」という商品

僕の仕事は、クセ毛をキレイなストレートヘアにすること──いわゆる縮毛矯正の専門技術です。
でもこの施術って、お客様にとっては「やりたいからやる」ものじゃない。
伸びてきて扱いづらくなったから「仕方なくやる」──そんな存在なんです。
これはつまり、ニーズ商品です。
“本当に欲しいもの”というより、“必要に迫られて買うもの”。
「辻さんの矯正がいい」と言われるまで
ところが最近、こんな声をよくいただきます。
「辻さんの縮毛矯正じゃないとダメなんです」
「他の店と全然違う仕上がりになるから」
これ、嬉しいですよ。めちゃくちゃ嬉しい。
でも同時に、いろんなことを考えさせられるんです。
なぜなら、ニーズ商品だった縮毛矯正が、
“あなたの施術がいい”というウォンツ商品に変化してしまったから。
僕という「人」が、商品になってしまったんです。
技術が生む「依存」と「非効率」
美容師って、どうしても技術を突き詰めたくなる生き物です。
僕もそのひとり。「もっとキレイに」「もっと自然に」って、終わりがない。
でもその結果、僕自身にしかできない技術がどんどん増えていく。
つまり、自分がいなきゃ回らないビジネスになっていく。
これ、ビジネス的に言うと「生産効率が最悪」です。
技術を極めるほど属人化する
居ないと仕事が止まる
一日に施術できる人数も限られる
どれも儲かるビジネスモデルとは言えない。
頭ではとっくにわかってる。
「仕組み化」ができない、という矛盾
「仕組み化しないと儲からない」
「属人ビジネスから脱却しろ」
そんなの何年も前から聞いてきたし、僕だって理解してる。
でも──できない。
「自分じゃなくてもいいように」なんて、どうしても思えない。
だって僕は、職人だから。
目の前のお客様を、自分の手で感動させたいんです。
技術でお客様が笑顔になる瞬間を、手放せない。
それでも僕は、この道を選ぶ
──じゃあ、どうすればいいのか?
…正直、わかりません。
技術を突き詰めれば突き詰めるほど、効率は悪くなる。
効率を求めれば求めるほど、技術の誇りは削られていく。
どっちが正解かなんて、誰にもわからない。
でも、だからこそ──
僕たちは、自分の“問い”に向き合い続けるしかないんです。
“儲かりたければ、技術を捨てろ”──?

もし誰かに、
「そんなに儲からないなら、技術を捨てればいいじゃん」
と言われたら、僕はこう答えます。
「いや、それやったらもう美容師ちゃうやん」
たぶん、僕にとって美容師って、**仕事じゃなくて“生き方”**なんです。
儲けなんか度外視してでもやってしまう──
それが職人であり、きっと僕という“商品”の限界なのかもしれません。
効率も利益も大事。
でも、“目の前のお客様にとっての一番”を提供できたときのあの笑顔を、僕は何よりも大切にしたい。
──だから今日も、僕は僕なりに問い続けています。


