矯正屋誕生秘話
第1話 嘘がつけなくなった美容師
1999年、矯正屋を立ち上げた頃
1999年。
僕は縮毛矯正専門店「矯正屋」を立ち上げました。
でも、当時の僕は今とは全然違います。
口だけは達者な美容師でした。
「大丈夫です。」
「できます。」
「何とかなります。」
お客様が喜びそうなことを、その場の勢いでペラペラ話す。
とにかく予約を取りたい。
断るなんてもったいない。
そんな美容師でした。
だから、美容師としては、それなりに売れていました。
美容師とは、とどのつまり営業マンです。
本当のことを言う美容師より、耳障りのいいことを言う美容師の方が売れる。
少なくとも、当時の僕はそう信じていました。
ある日、口が動かなくなった
ところが、ある日…。
縮毛矯正の神様の怒りを買ったのか、不思議なことが起きました。
ある日を境に、お客様に都合のいい嘘をつこうとすると、口が動かないのです。
「できます。」
……言えない。
「何とかなります。」
……やっぱり言えない。
結局、口から出るのは、
「今回はやめた方がいいです。」
「その髪では無理です。」
「うちではお受けできません。」
そんな、商売にならないことばかり。
僕は絶望しました。
こんな美容師が売れるわけがない。
嘘もつけない営業マンなんて、この先どうやって生きていけばいいんだ……。
正直な美容師なんて、商売にならない。
当時の僕は、本気でそう思っていました。
でも、お客様は増え始めた
美容師としては最悪の呪いです。
でも、不思議なことに、その頃から少しずつお客様が増え始めました。
「この人は、本当のことしか言わない。」
そんな口コミが、少しずつ広がっていったのです。
こうして今の矯正屋が生まれました。
この話には、少しだけ脚色があります。
でも、僕の考え方や、実際に起きた出来事は、ほぼ本当です。
だから今でも、僕は思っています。
美容室は、いきなり予約する場所ではありません。
まずは相談。
話は、それからです。
ところが、この”呪い”には、もう一つ困ったことがありました。
それは、お客様が予約する前から断ってしまうことです。
──第2話「美容室はいきなり予約してはいけない」へ続く。

